パワハラ・セクハラ・マタハラ・モラハラ…
ハラスメントに関する解決への道
近年、職場においては、従来からのいわゆる「正社員」がリストラされ、代わりに不安定な雇用形態である、「有期契約」、「派遣契約」、「パート」、「アルバイト」などの「非正規労働」に置き換えられています。
また、雇用や賃金をどのように決定するのかという人事考課システムについても、これまでの年功型システムから成果主義システムへと変貌し、職場の中はギスギスしたものになっています。
こうしたことを構造的要因として、職場内で弱い立場にある労働者に対して陰湿な嫌がらせを行う「ハラスメント」が社会問題になっています。
こうしたハラスメントは、心身を破壊し、取り返しのつかないことにも繋がりかねません。
正しい知識をもって、適切な対処を行いましょう。
ハラスメント
ハラスメントには、「パワーハラスメント」、「セクシャルハラスメント」、「マタニティハラスメント」などがありますが、ここでは、相談が多いパワーハラスメントについて、事例とともに説明します。
パワーハラスメントとは、厚生労働省によれば「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されており、以下の6つが例として挙げられています。
パワーハラスメントの6つの類型(厚生労働省)
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/pawahara-six-types/
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
- 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
- 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
パワハラの
傾向と対策
会社がパワハラをするありがちな背景には、実は「大した理由がない」(単純な好き・嫌いなど)や、「一方的な会社都合」(自己都合退職をさせるため)でパワハラを行うケースが多くみられます。
意外なことに大手や有名企業でも行われている事例も多々あります。
こうしたパワハラは、なぜか計画性や法知識なしで行ってしまうことも多く、例えば普段からの指導や研修を行っていなかったり、事前の注意勧告が不十分であったりと、自ら作った就業規則に則っていないケースだけではなく、実は規則そのものに不備があることすらあります。
(もちろん、会社ぐるみでシステマチックに退職に追込む企業もありますが、その場合はパワハラというよりも、評価や配転、待遇などで追い詰める方法が一般的なので、ここでは割愛します。)
こういったケースのパワハラ事件で組合が団体交渉を行う場合、会社に対して様々な観点から事件についての説明を求めることになるのですが、会社は整合性のある説明ができず、大抵(会社が雇った)弁護士が(まるで後付したかのような)無理がある言い訳をすることになります。解決までの過程で組合は証拠を積み重ね、違法性を明らかにしていくのことになるのですが、大事なのは事前の当該労働者による証拠集めといえます。
録音記録や日時・場所・言動内容を明記したメモ等、証拠の積み重ねが、後々、組合と会社との話し合いや司法や行政で争いとなった場合にも強力な武器になります。
また、会社は、貴方に対してハラスメントを行った上司をかばい、「教育・指導の一環だった」などとしばしば主張します。この点で、労働契約法に則った合理的な教育指導であったかを検証すvるためにも、日頃から貴方の会社の「就業規則」、「賃金規程」、「人事評価規程」や業務命令の書面やメールなどを集めておくことが大事です。
組合へ加入することのメリットは、こうした基本的な戦略や知識が得られるのみではなく、早期からの対策も含め参加することによって戦術レベルの知識や技術などが自然と身に付くこと、また加入したことによって新たな権利が発生し、主張できる権利の幅が広がるといったところにもあるのです。
パワーハラスメントは、反社会的な行為です。本来、会社には、労働契約法5条が定める「安全配慮義務」等多くの遵守すべき法令があり、会社は社員が安全、安心に働けるような環境を整備する義務があるのです。
しかし、会社がハラスメントを行って社員を退職へ誘導するのであれば、社員は泣き寝入りすべきではありません。
労働組合へ加入し、パワーハラスメントなどの防止、労働条件の改善を求めて、交渉すべきであると考えます。