2.PIP(業績改善計画)
こうした降格・減給に際して、最近の企業では、PIPという人事考課システムを利用するケースが増えています。
PIP (Performance Improvement Plan,-Program)とは、「業績改善計画」などとも呼ばれるもので、会社が用いる首切り手法の一つです。
PIPの具体的手法は、ターゲットとした労働者に対して「本人の改善のため」、「能力を開発するため」と称し、90日程度の短期間に達成困難な課題や公正な評価が難しい課題を突きつけます。
その際に、会社は労働者に、「達成できなかった場合は、『降格、降給、解雇』などを受け入れる」旨の書面にサインさせて、圧力をかけて、労働者を退職に追い込むやり方です。
アメリカなどでは、しばしば首切りの手段として行われています。日本でも外資系企業を中心としてグローバルな人事政策として実施し、その相談も増えています。
ある大手外資系企業は、このPIPを就業規則上の処分項目に記載しています。
このことから、会社は、「改善」、「指導」と称していますが、実際には、PIP対象とした社員を「ローパフォーマー」、「会社に損害を及ぼす不良品」と見做して、退職させようとしていることが窺われます。
会社は、PIPを「指導」と称しています。しかし、実際には、一定程度の下位成績の社員を入れ替えるために、通常業務の他に達成困難な目標を課し、正常な指導や業務命令権の範囲を逸脱することがしばしばあります。
これは日本の法令に照らし合わせて違法となる可能性があるものです。また、評価する上司が、主観でもって、あなたのことを「リーダーシップがない」、「会社の文化に合わない」、「謙虚ではない」などと抽象的に批判し、具体的な助言や指導を行わないといった問題も多く発生しています。こうして、社員に「無能な自分が悪い」、「できない自分は、この会社の基準に合わない」、「こんなに叱責されるなら、辞めて、別の会社に移った方がまだ良いかな」と思いこませて、最終的には、未達成をチラつかせながら、自発的な退職へ追い込む仕組みになっています。
下記は当ユニオンのブログですが、事例として参照してください。
アストラゼネカ:http://ameblo.jp/2716e/entrylist.html
こうしたPIPは、合理性を欠く場合、労働契約法第1条の定めに反するものとなります。
また実際の行使にあたって人格を傷つける言動などを取ることはパワーハラスメントにも該当します。
さらに退職強要の手段として行使すれば、これも違法なものとなります。
まず大事なことは、PIP書面に、すぐにサインしないことです。サインをすることは、その書面に書かれた「降格、降級、退職」に同意することになります。
その場の雰囲気で、安易にサインしてしまうと、後々、思い直して、同意を取り消そうと思っても、取り返しがつかないことになります。
PIP同意文書へのサインを強要された場合は、まず「サインが業務命令であるか」を会社に質問することが大事です。会社が「業務命令である」と称する場合には、サインを拒否することに対して「業務命令違反」として処分される可能性があります。
そこで、その場合には、命令に従い、サインするが、同時に異議留保申立をする必要があります。
しかし、強い権限を持つ上司や会社に対して、たったひとりの労働者でこうした対処を行うこと、立ち向かうことは、困難な場合が多いと思います。
その場合、東京管理職ユニオンにご相談いただき、適切な対処を行うことをお勧めします。